歯周病について
歯周病とは
その字のごとく、歯の周りの病気です。
歯の周りとは、
- 歯茎
- 歯槽骨(歯を支える骨)
- 歯根膜
(骨と歯をつなぐ靭帯のようなもの)
で基本的に構成されていて、これらが破壊されることを歯周病と言います。歯周病は、現在日本人の80%以上が罹患していると言われています。歯を失ってしまう理由の1位は、実は虫歯などではなく歯周病です。
歯周病になる原因とは
一般的には「歯や歯茎についた汚れ」が原因とされております。バイオフィルム(細菌の塊)が、感染することで引き起こされるもので、プラークや磨き残し、歯垢と呼ばれるものがこれに該当します。これらは歯ブラシですぐに落ちるものですが、上手に落ちていない部分が48時間ほど経過すると唾液の中の成分と反応して歯石というものになります。これはとても硬く、歯ブラシでは落ちないので歯科医院で行う専門の器具が必要になります。
また歯石は、顕微鏡などで見ると表面がとてもザラザラして粗造なためそこにさらにプラークが付着しやすくなるという悪循環を引き起こします。このようにしてコントロールしきれなかった汚れが積み重なっていくことで歯周病になってしまいます。
また、汚れがついてないケースでも遺伝的な要素が原因で歯周病になることがあります。ご自身ではよく磨けており、歯科医院でもその汚れのコントロールについては問題がないと言われているはずなのに歯が揺れてしまったり腫れているなどのケースで遺伝的な要因を疑うことができます。
以下、歯周病と関連がある身体の病気です。
- 糖尿病
- 早期低体重児出産(妊娠中の方)
- アテローム(心臓の肥大化)
- 肺炎
- アルツハイマー型認知症
- リウマチ
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 心内膜炎
- 動脈硬化
歯周病と関連があり全身の健康に対して影響があるものをペリオドンタルメディシンといいますが、例えば生活習慣病で有名な糖尿病は、糖尿病が改善すれば歯周病が改善することがあれば、歯周病が改善して糖尿病が改善するケースもあり、相互に影響を及ぼすこともあります。
歯周病症状の段階について
軽度歯周病
歯茎が少し腫れていたり、赤くなっていたり、歯ブラシやフロスの際に少し出血することがあります。自覚症状はほとんどなく、検査をした結果、歯周病が発覚することがよくあります。歯を支える骨の吸収はあっても軽度なことが多いです。
中等度歯周病
歯茎の腫れや赤みが少し増してきたり、出血の頻度が増えることが多いです。場合によっては噛むと痛かったり、歯がしみる、揺れるなどの症状も出てきますが、無症状の方もいらっしゃいます。歯を支える骨が歯の根の真ん中ほどまで吸収されてしまていることもあります。
重度歯周病
歯茎の腫れや痛み、出血、噛むと痛い、歯が大きく揺れる、歯の隙間が空いてきたといった症状が特徴としてあげられますが、そのご自身の状態に慣れてしまって痛みを感じられない方もいらっしゃいます。歯を支える骨はもうかなり吸収されてしまい、場合によっては勝手に抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病セルフチェック
こんな症状の場合は歯周病の可能性が
あります。
- 口臭がする
- 血がでる
- 歯が揺れる感じがする
- 唾液がネバネバする感じがする
- ネバつきを感じる
- 歯が揺れて食事がしづらい
- 歯が揺れている
- 歯の隙間が空いてきた
- 1日1~1.5回しか磨かない
- 歯を磨かないで寝る時がある
歯肉炎について
歯肉炎とは
歯肉炎は歯周病の前の段階です。歯の周囲の組織はまだ破壊されていませんが、軽い歯肉炎ぐらいならば、メインテナンスに来ていない方であれば、なってしまっているケースがほとんどです。歯茎の周りに溜まった歯石や汚れなどによって引き起こされてしまいます。
当院の歯周病治療
歯周病治療の診療方針
まずは現状を知るために細かい歯周病検査をさせていただきたいです。その検査結果に応じて、清掃指導や細かい歯石とり、再生療法やその他、歯周組織に対して繊細な治癒が起こるような処置を施します。
当院の歯周病治療の特徴
保存的に治療を行います。歯科医学的に正しい治療方針はありますが、それがいつも患者様にとってのベストであるとは限りません。なるべく現存している歯を残せるように、尽力いたします。「これはもう残せません」といわれた歯がある方はご相談ください。
歯周病で抜歯を行った方が良い
ケース
痛みや腫れなど、治療しても引かない症状が残っていたり、揺れが横だけではなく縦方向(ずぶずぶと歯茎に沈んで行くように)にある場合、明らかにその歯が細菌たちの巣になっているケースなどは抜歯を推奨いたします。当院は基本的には保存的な考え方ですが、「無理やり残す」というのは良い面と悪い面をもっていて、例えば無理やり残すことで他の歯に影響が出たりするようであれば抜歯せずに残すメリットは薄いと思われます。
歯を抜かずに治療する
メリット・デメリット
歯はかけがえのないもので、失ってしまったら戻りません。患者様とご相談させていただき、残すメリットが抜歯するデメリットを上回った場合は、残して保存することでご自身の歯として使えること以上のメリットはございません。物理的に考えても、人工物よりはご自身の歯の方が咀嚼した時の感覚は自然です。
また、しっかりと診断した上で、今、歯を残して、将来抜歯をすることになってしまったとしても、欠損補綴(抜いた後にする処置の事。ブリッジ・インプラント・入れ歯・移植等)の時期を後ろのタイミングにずらせるというメリットは大きいです。
歯を抜いた場合メリット・デメリット
メリット
- 周囲の歯や歯周組織に対してのダメージが抑えれる
- 痛みや腫れなど悩まされていた症状が改善する
- 匂い等不快症状の改善
デメリット
- どんな処置をするにしても少なからず費用がかかる
(インプラント、ブリッジ、入れ歯、移植・・・) - 処置の内容によっては横の歯を削るなど大きな犠牲を伴う
- 治療方針への大きな影響があること
歯周病治療の流れ
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問診
まずは何に悩みを抱えているのか、どう治していきたいかをお伺いさせてください。患者様の思いを汲んだ上で、治療計画を練っていきます。
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検査
口の中を直接拝見したり、レントゲンや歯周ポケット検査等で現状の把握をさせてください。
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スケーリング・清掃指導
歯周病になってしまう理由はバイオフィルム感染(細菌の感染)です。磨けていれば歯周病にはならないので、まずは磨き方の改善を先行して、これ以上磨き残しが増えて歯石が増えたり、病状を悪化させないようにすることが大切です。ケースによっては、スケーリング(歯石除去)を先にさせていただいたくこともございます。
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再検査
清掃指導や、スケーリングをした結果、歯茎にどのような変化が出たかを確認します。
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SRP
再検査の結果、改善していない場所があったらSRPと言って歯茎の深くに付着している歯石の除去を行います。少し痛みがあることもございますので、苦手な方は局所麻酔をして行います。
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再々検査
SRPや日頃の清掃の結果がどのようにでたかを検査します。
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オペの検討・プランニング
再々検査でも改善していない部位に関しては歯茎時の状態を改善するためのオペの提案や検討をさせていただきます。
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メンテナンス
患者様によって、上記の流れのどこまで進むかはそれぞれですが、改善したケースは全てメンテナンスに移行します。改善することも大切ですが、改善した環境を維持することがとても大切です。3ヶ月に1度、来院していただくことで健康状態を維持できる可能性が高いことが医学的根拠に基づいて証明されていますので、忘れずにお越しください。ケースによってはメンテナンスの期間を縮めたり伸ばしたりすることもございます。
歯周病の治療法
スケーリング(歯石とり)やバイオフィルム除去
軽度歯周病の場合
スケーリング(歯石とり)やバイオフィルム除去で改善することがほとんどです。目安として約4回程の来院と考えていただければと思います。虫歯の処置などもある方は、同日に処置を行えば効率よく通っていただくことができます。
中等度歯周病の場合
上記の処置に加えて、深い歯周ポケットに対して処置を行います。ご希望があれば麻酔をして行うもので、専用の器具を用いて歯の根の部分に強く固着している歯石を除去していきます。一気に除去するとご負担が強いので、お口の中を6ブロックに分けて行うのがスムーズです。評価など含めて、約10回前後を目安として、他治療と並行して通っていただくのが良いです。
重度歯周病の場合
上記の処置に加え、さらに歯周外科治療が必要になることがあります。具体的には、例えば歯茎に局所麻酔をした上で歯茎を一部切開し、直視しながら汚れやバイオフィルムを取ったりするような処置です。
ケースによっては、保険でも「歯周組織再生療法」を選択することができます。これは、破壊されてしまった歯槽骨(歯を支える骨)などを回復するような治療法になります。回数や期間はもちろんかかってしまいますが、担当医・担当衛生士と相談した上で無理なく通える治療プランを考えましょう。
フラップ手術
局所麻酔を用いて歯茎を切開し、直視しながら歯の表面についた汚れを除去する処置です。
外科処置になるため、心のハードルは高いかとは思いますがその代わりに回復の期待はできます。約45〜90分で処置は終わり、1〜2週間後に抜糸を行います。
どんな症状の時に行う治療か
清掃指導・スケーリング・SRP(歯石除去)など、外科処置を伴わない歯周病治療を行なっても歯茎の腫れや状態の改善が見られない時に行う処置です。
治療で期待できる効果
ツルツルにした歯の表面と歯茎の付着を期待します。付着することで歯周ポケットは狭くなり、清掃がしやすい状態を作ることができます。
歯周組織再生療法
バイオフィルムによって破壊されてしまった歯周組織を回復する治療法です。失われた組織(骨など)に対して、動物から採取した未分化(これから何にでも化けれる)な細胞を用いて組織再生を促すような治療法です。
世界的にも使用されており、厚生労働省の認可も取得している材料を用いた治療法になります。
骨移植
歯周組織再生療法において、再生をより精度が高いものにするために骨移植を併用することがございます。
骨移植で使用できるのはご自身の骨(口腔内の、採取しても問題が起きづらいと言われている部位から採取します)動物由来の骨化学的に作られた骨などがありますが、ケースによって選択の組み合わせが変わります。
どんな症状の時に行う治療か
歯周病が進行してしまい、歯周組織(歯槽骨・歯根膜・歯茎)の破壊が起きてしまっているケースの際に検討できる手札です。
治療で期待できる効果
歯周病によって失われた組織を再生することで、歯を支える組織達を改善させ、歯が長持ちするようになります。